スポンサーリンク

『鬼滅の刃』英語版の惜しいところーー「元号」をどう訳すか

英語学習

こういう記事が出ました。

「鬼滅の刃」英語版を全力で読んでわかったこと

私も煉獄さんが登場する第8巻までは英語版コミックスを持っているので興味深く読みました。ヤフーでのコメントが熱いですね。ファンの方の思い入れの強さが伺われます。

総じて、コミックスの英訳はよく工夫がなされており、とても参考になるなあと思っているのですが、第1巻で「惜しいな」と思った点が一つ。

最終選別で遭遇する「手鬼」が炭治郎に語りかけるシーンです。

狐小僧 今は 明治何年だ (『鬼滅の刃』第1巻 第7話「亡霊より」)

炭治郎はこう答えます。

今は大正時代だ (同上)

これが、コミックス英語版ではこうなっているのですね。

(手鬼)What Meiji Emperor sits upon the throne? (“Demon Slayer — Kimetsu no Yaiba– Volume 1, Chapter 7 ‘Spirits of the deceased’)

(炭治郎)The Imperial Family is Taisyo! (同上)

手鬼のセリフをできるだけ忠実に日本語に訳し戻すと「明治朝のどの帝が今玉座についているんだ?」。炭治郎のセリフは「皇室は今は大正(朝)だ」。

そしてその後の、

年号が変わっている!!(同上)

という手鬼のセリフは

Dynasties have risen and fallen! (同上)

と訳されています。これも訳し戻すと「王朝は栄え、滅んでいる」。

私は、漫画の英訳は英語圏の人にとってわかりやすいように意訳するのはOK派なのですが、これはちょっと微妙かも。

英語ネイティブの人が訳していますが、日本の皇室は万世一系であり王朝交代をしておらず、したがってイギリスの「ハノーヴァー朝」「ウィンザー朝」などのような言い方をしないこと、明治時代からは「一世一元の制」となり「明治」「大正」という元号を用いる天皇もそれぞれお一人しかいないことをご存知なかったのではないかな、と思います。

英語だけで読んでいたらさらっと流して読めてしまうところですが、漫画が入り口となって日本文化に興味を持つ方もおられるでしょうから、その方々のためにもここは日本人が再度チェックして校正してほしかったな、と思いました。

何と訳せばいいかというと…私の案としては、

手鬼の問いは

・How many years have passed since the Meiji Emperor ascended to the throne?

(明治の帝が位についてから何年経ったんだ?)

あるいは

How old is the Meiji Emperor now?

(明治天皇は今何歳だ?)

炭治郎の答えは

Current Emperor is Taisyo. 

(今の天皇は大正天皇だ

みたいな感じでしょうか。いずれも直訳じゃないけれど、王朝交代とは違うという点は踏まえられていると思います。

手鬼の「年号がア! 年号が変わっている!」は難しいですね。

コミック英語版の”I’ve been here so long…(自分”は余りにも長いことここにいたので)”で始まる文を活かしたら、

I’ve been here so long…that now you say you have a different emeperor!

(余りにも長いことここにいたので・・・今や新しい帝がいるのだな

みたいな感じではどうでしょうか。ちょっと前後のつながりがぎこちないかな。

色々考えてみるのが面白いですね。

「大正こそこそ話」で吾峠先生が考えたタイトル候補も全て翻訳してしまう位パッションを感じる翻訳なので、惜しいと思ったところです。上述の記事に寄せられたコメントによると、コミックの英語版、アニメの英語字幕、北米向けアニメの吹き替え版もそれぞれ訳が違ったりするみたいなので、研究してみようと思います。

なお、英語で元号を説明するのは難しいですが、下記のようなサイトが参考になります。

「令和」「平成」「昭和」「大正」「明治」の元号を英語で語ろう



 

タイトルとURLをコピーしました