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マルクス・アウレ−リウス著 『自省録』

春先に流行っていたブックカバー・チャレンジで友人に紹介した本です。

哲人皇帝として名高いマルクス・アウレ−リウス帝が忙しい軍務の合間を縫って自らの戒めとして書き留めた手記です。

手記、と言っても従軍先のテントなどで走り書きされたものなので、一つひとつが長い文章ではありません。手元に置き折りに触れ読み返すのに最適です。

神谷美恵子による訳者解説が秀逸です。

 しかしこのストア思想も、一度マルクスの魂に乗り移ると、なんという魅力と生命を帯びることであろう。それは彼がこの思想を身をもって生きたからである。生かしたからである。マルクスは書斎人になりたくてたまらなかった。純粋の哲学者として生きるのを諦めるのが彼にとっていかに苦痛であり、戦いであったかは『自省録』の随所にうかがわれる。しかし彼の場合には、彼が皇帝としてなまなましい現実との対決に火花を散らす身であったからこそその思想の力と躍動(エラン)が生まれたのかもしれない。『自省録』は決してお上品な道徳訓で固められたものではなく、時には烈しい怒りや罵りの言葉も深い絶望や自己嫌悪の呻きもある。あくまで人間らしい心情と弱点をそなえた人間が、その感じ易さ、傷つき易さのゆえになお一層切実にたえず新たに「不動心」(アタラクシア−)をに救いを求めて前進して行く、その姿の赤裸々な、いきいきとした記録がこの『自省録』なのである。

マルクス・アウレ−リウス著 神谷美恵子訳 『自省録』「訳者解説」より

付箋をつけた箇所はたくさんあるけれど、今一番気に入っているのはこの一節。

 ここで生きているとすれば、もうよく慣れていることだ。またよそへ行くとすれば、それは君のお望み通りだ。また死ぬとすれば、君の使命は終えたわけだ。以上のほかになにものもない。だから元気を出せ。

マルクス・アウレ−リウス著 神谷美恵子訳 『自省録』第10巻

皇帝、最高にロックです。

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