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清川永里子『迷ったら声で決める!』

通訳の仕事や英語指導をしている中で「声が前に飛ばない」「英語でも日本語と同じように余り口の周りの筋肉を使わずに話すので聞き取りにくい」等の現象を経験し、どうにかできないかと考えている中で出会った本。

具体的な練習方法などには余り触れられていないのですが、はっとする指摘がいくつもあります。

 日本の学校教育現場では、「大きな声で!」と要求される場面が多々あります。例えば、体育での点呼、国語での朗読、返事、部活動での声出しなど、様々な場面で、「大きな声で」と先生に要求されます。

しかし、この「大きな声で!」という声出し法は、本来間違っています。

良く通る声で!」と生徒には言うべきでしょう。

学校で間違った「大きな声」を求められた子ども達は、大きな声を出すために喉で押すような声、つまり、腹式呼吸を使わない、良くない発声方法を身につけてしまうことになります。

実際、大人になった私たちが「大きな声で!」と言われると、喉から怒鳴るような声を想像してしまうのは、この学校教育の上での、間違った思い込みのせいかもしれません。

この事が、日本人における、喉声(喉で押すような声で、腹式呼吸を使わない声)の多さや、歌や声を出す時の、上達の遅さにも多少たりとも影響していると、私は思います。(中略)

大きな声というと、ただ出せばいいと思いがちですが、そうではなくて、「良く通る声で、声を遠くに響かせる」というのが正解なのです。

(清川永里子 『迷ったら声で決める!』 第4章 「あなたの知らない声の不思議な話」より)

通訳をしていると、「声が前方に届く」というのがいかに大切なことか考えさせられます。今では英語を話す日本人の方も増えましたので、日本人が話す英語を、英語が苦手な方に向けて日本語に通訳する、という機会があります。しかし、日本人が英語を話す場合十分な声量で平板にならず、目の前にいる聴衆に向けて聞きやすい話し方ができる、というのはなかなかハードルが高いですね。

それはやはり、この本で指摘があったような発声方法の違いが原因となっているような気がします。

私は、「通訳者のための発声トレーニング」という講座を受講したことがあります(コロナ前)。10メートル位間隔を空けて立っている相手に向けて声が届くかどうか、ということをまず訓練させられました。勿論、腹式呼吸を使った声で、です。同時通訳ではそんなに声を張ることはないからそういうことはできなくてもいいかと思ったらさにあらず。逐次通訳では声を張らないといけない場面は多々ありますし、ウィスパリング・同時通訳でも「良く通って響く声」でありつつ、だんだんと音量を適正なレベルに調節していけるほうがよいのです。実際、「囁き声が一番喉を痛める」とその時の講師はおっしゃっていました。

発音・発声については、まだ研究を始めたばかりなので、更に詳しく調べていきたいと思っています。

 

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