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「自由で開かれたインド太平洋」基本用語

菅総理大臣が総理就任後初の外遊先としてベトナムとインドネシアを訪問中です。

ベトナム及びインドネシア訪問についての会見

その中で触れられている日本の外交戦略である「自由で開かれたインド太平洋」*について、改めて復習してみました。

まず、外務省のページで概略を掴みます。

自由で開かれたインド太平洋 基本的な考え方(日本語)

自由で開かれたインド太平洋 基本的な考え方(英語)

その後、用語の対訳リストを作ります。こんな感じです。

地球儀を俯瞰する外交 Diplomacy that takes a panoramic perspective of the world map
現状変更 attempts to change the status quo
法の支配 rule of law
航行の自由 freedom of navigation
連結性 connectivity
経済回廊 economic corridor
国際場裡 internatonal arena
能力構築 capacity building
海洋状況把握 MDA: Maritime Domain Awareness
巡視艇 patrol vessel

力を背景とした一方的な現状変更
unilateral attempts to change the status quo by force or coercion
(外務省 https://www.mofa.go.jp/press/kaiken/kaiken4e_000476.html)
瀬取り ship-to-ship transfers (外務省、同上)
〜船籍の 〜-flogged
e.g. Dominican-flagged ship (外務省、同上)
大量破壊兵器 WMD: weapons of mass destruction

資料を英日両語で読み、対訳の用語リストを作り、それを覚える。非常に地味でシンプルな作業ですが、通訳をする時は必ず実施します。

「自由で開かれたインド太平洋」に関連して、北朝鮮情勢についても論じられることが多いので、ついでに調べてみて、興味深い事実を確認しました。

北朝鮮の非核化については、「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」を意味するcomplete, verifiable, irreversible dismantlement(CVID)という言葉を当初よく聞いていたのですが、アメリカの外交スタンスが変わるにつれて、用語自体が変わってきていたのですね。

CVID:
Complete, Verifiable, Irreversible Dismantlement
完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄

Complete,Verifiable,Irreversible Denuclearization
完全で検証可能かつ不可逆的な非核化

FFVD:Final, Fully Verified Denuclearization
最終的かつ完全に検証された非核化

参考記事:

「非核化」で骨抜きにされた「CVID」では、誰も核を手放さない(2018年6月12日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/06/cvid.php

米、完全非核化の表現を「CVID」から「FFVD」に(2018年7月9日)
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/261004/070800072/

米国防長官、北朝鮮が嫌がる「CVID」再び提唱(2020年7月10日)
https://bit.ly/34gkayi

当初、CVIDのDがdismantlementだったものdenuclearizationになり、「検証に集中する」としてFFVD (Final, Fully Verified Denuclearization)になり、再び外交スタンスの変化によりCVIDへ。経緯を追っていくと、用語の変化が情勢や当事者の外交戦略の変化を反映していることがわかり、興味深いです。

*投稿した当時は、「自由で開かれたインド太平洋戦略」というタイトルにしていたのですが、最近になって「戦略」「構想」という言葉を外したということを知りましたので、「自由で開かれたインド太平洋」に変更しました。でも、「構想」も「戦略」もつかないのは、何となく用語として座りが悪いですね。(2020/11/12)

 

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