スラッシュ・リーディングについては、以前、下記のような記事を書いています。
スラッシュ・リーディングについて:英語学習法で有益な方法、でもその一つ
この記事の中で、スラッシュ・リーディングとサイト・トランスレーション(サイトラ)の違いについて、次のように述べていました。
・「スラッシュ・リーディング」は自分の理解のために行うもの。日本語の文として綺麗にまとまっていなくてもよい。
・「サイト・トランスレーション」は他者に聞かせることを目的としたもの。訳出した文章は日本語としてまとまっていることが望ましい。「目で読むけれど、頭の中に残しておいて、後で訳出する」というふうに、同時通訳独自のテクニックも入ってくる。
ーー「スラッシュ・リーティング」よりーー
ただし、一般的にはこのような使い分けはしていないようです。すなわち、日本語の文として綺麗にまとまっていなくても、「サイトラ」と呼ばれていることが多いようです。
例えば下記のような記事をご参照ください。
通訳トレーニングの定番「サイトラ」って何?方法と効果を徹底解説
通訳者や翻訳者が行う勉強法「サイトトランスレーション」とは?
それでは、
スラッシュ・リーディングは自分の理解を深めるために行うもの、
サイト・トランスレーション(サイトラ)はどちらかと言えば他者に聞かせることを目標としたもの、
と定義した場合の違いを少し見てみましょう。
以前もご紹介した、PBS Newshourの記事を例にとってみます。
The challenges of returning to in-person classes in a state spiking with COVID-19 (2021年8月11日の記事)
これの最初の部分を、スラッシュ・リーディングしたものとサイトラをしたものをお示しします。
違いがお分かりいただけますでしょうか?
この場合の「サイトラ」では、前から前から訳していくスタイルを基本とするものの、日本語として文章を完結させるために、
「目で読むけれど、頭の中に残しておいて、後で訳出する」
「文章を途中で切った場合は、二度同じ意味合いを繰り返す」
など、同時通訳につながるテクニックを使っています。
詳しくは、こちらの図などをご覧になってくださいね。
英語ー日本語間の同時通訳は、言語構造が大きく異なるため、「文章を途中で切ってAとBに分けて訳すが、Bの文章が完結するためにAの要素の一部を繰り返す」ということをせざるを得ません。この繰り返し部分があるために、英語ー日本語間の同時通訳では原発言よりも訳出のほうがボリュームが増えるのです。
サイトラは同時通訳の第一歩です。上級になってくると、スラッシュや補助記号の入れ方、目の動かし方、どこまで待って訳すか、どれだけ繰り返し部分を少なくするかなど、沢山のテクニックを使っていくことになります。同時通訳をやってみたい方は、ぜひサイトラにも積極的に取り組んでみてください。