先日、スティーブ・ジョブズのスピーチについて少し書いてみました。
“connecting the dots”(点と点をつなげること、つまり、自分の人生を振り返った時に、つながりや意味を見つけること)についてです。
私の場合はどうだったか。
私はとても人見知りで内向的な子どもでした。なので、今、「通訳をメインに仕事をしています」というと驚かれます。じっと一人で作業をする翻訳のほうが向いている、とよく言われたものです。
しかし、社内通訳も含めれば四半世紀の間通訳をメインのしごとにしてきて思うのは、マニアックな通訳訓練を続けられたのは孤独の中で勉強する力があったから。何しろ、通訳学校在籍時は仕事の傍ら一日4時間は机に向かい、土日は6時間勉強していましたから。今となれば、もっと効率よく効果的な方法があったと思いますが、通訳訓練はある一定の量をこなすことがどうしても必要です。それを具体的な効果が出てくるまで続けられたのは、一人であれこれ工夫しながらじっと作業に取り組む性分が幸いしたといえます。
しかし、通訳をメインの仕事にできたらそれで自分の目的は果たされたかというと、どうもそうではない感じがしている今日このごろです。
今、通訳訓練コースを含む6つのコースで授業を受け持っていますが、自分の体験を踏まえつつも、受講生の方の力を引き出すためにあれこれ工夫をすることが本当に楽しい。実は昔から「教師に向いているのでは」と言われていましたが、30年ほど遠回りをして、ようやく「向いている」道に戻ってきた気がします。
でも、振り返ってみれば、「全ては英語学習の面白さを誰かに伝えるための準備」だったような気もするのですよね。通訳という、英語を使った仕事の中でもかなり難度の高い仕事を一定程度経験したからこそ、言えることがある。自分が経験したあれこれの試行錯誤があるから、今教えている人たちは同じ轍を踏まずに歩いていってもらえるよう、考えることができているような気がします。
スティーブ・ジョブズが言っていた通り、蒔いていた種がいつ花咲くのかは分かりません。未知のことでも興味のあること、自分のハートが呼びかけることに勇気を持って取り組むこと、そしてときには自分の歩いてきた道を振り返ってそれに意味を見出すことは車の両輪のような気がします。