漫画・アニメ・映画ともに大ヒットして社会現象になっている『鬼滅の刃』。
第一巻では、義勇さんのあの名セリフが印象的ですね。
生殺与奪の権を他人に握らせるな!
(『鬼滅の刃』第1巻 第1話「残酷」より)
これが英語版ではどうなっているかというと・・・。
Never leave yourself so defenseless in front of an enemy!
“Demon Slayer –Kimetsu no Yaiba” Vol.1 episode one “cruelty”)
直訳すると「敵の目の前でそんなに無防備なままでいるな」。
前にも書いたことがありますが、漫画の英語はスペースの制約が厳しいため、内容を汲み取った意訳になることが多いです。また、文化的な相違を考慮して、英語スピーカーにとってすっと頭に入ってくる表現になっていますね。
このあたりから義勇さんの長台詞が始まるのですが、次に印象的な
笑止千万!(日本語版:同上)
というセリフも
If you want something…you must fight for it!(英語版:同上)
(直訳:何かを求めているのなら、そのために戦わなくては)
と訳されています。
『鬼滅の刃』のセリフまわしの魅力の一つでもある、難しめの漢字や四字熟語・古めかしい言い回しを使用した独特の空気感が英語では消えてしまうのが残念ですが、英語だけで読む人にとってわかりやすい訳になっていると思います。
今のこの大ブームを学習に生かさない手はないな、と個人的に思っています。
昔、自分で英語劇を演じることで学ぶという学習方法が流行ったことがありましたが、それこそこれもロールプレイでそれぞれの役になりきってラジオドラマみたいな感じで演じてみたらどうかな、と思っています。誰がどの役をやるかで揉めたりしそうですが…。
中学校で英語を学び始めたばかり、という人には難しい文法もたくさんあります。
If I’d come half a day sooner…your family might have survived.
(「俺があと半日早く来ていれば お前の家族は死んでいなかったかもしれない」)(同上)
では仮定法という高校で習う文法項目が使われているし、
A human who becomes a demon cannot go back.(直訳:「鬼になった人間はもとには戻らない」)(同上)
では、これも関係代名詞という難しめの文法項目が使われています。
でも、詳しい理屈を学ぶのは後回しにして、セリフ全体をとりあえず覚えてみるのもいいのではないかな、と思います。
英語で書かれた子どもむけの本を読んでいると、難しい単語はないものの、文法は結構早い段階から高度なものが現れます。母語の習得と第二言語の学習は同じには考えることはできないけれど、どういう順番で、そしてどういう方法で文法を指導したらいいのか最近よく考えています。