通訳技術を学ぶクラスではもちろんですが、通訳スキルを活用して英語力を伸ばすことを目的としたクラスでも、スラッシュ・リーディングを積極的に取り入れています。
「スラッシュ・リーディング」とは、「英文の文の切れ目にスラッシュを入れ、スラッシュまでの間を文頭から情報処理していく手法」のことです。
「サイト・トランスレーション(略してサイトラ)」と互換的に使われることが多いのですが、私は
・「スラッシュ・リーディング」は自分の理解のために行うもの。日本語の文として綺麗にまとまっていなくてもよい。
・「サイト・トランスレーション」は他者に聞かせることを目的としたもの。訳出した文章は日本語としてまとまっていることが望ましい。「目で読むけれど、頭の中に残しておいて、後で訳出する」というふうに、同時通訳独自のテクニックも入ってくる。
と考えています。
「スラッシュ・リーディング」は、もともと、大量の資料を読まなければならない英語圏の大学生や弁護士が行っているもので、英語が第一言語の方、あるいは英語だけで生活できればよい方の場合は、わざわざ日本語で考える必要はありません。ただ、私の経験上、日本でずっと英語を学ばれている方の場合は、補助的にですが日本語で意味や文の構造を考えたほうが、複雑な文を理解する能力を伸ばしやすいと考えています。
以下は、スラッシュ・リーディングをした時の具体例です。
これは、この教材をスラッシュ・リーディングしたものです。
「文頭から情報処理する」(つまり、英語が書かれている順番に情報処理する)と書きましたが、入り組んだ構造の文の場合は、それにふさわしい補助線を入れて、
・代名詞が表しているものはなにか
・文の構造はどうなっているのか
等を確認します。
真ん中の”Precautions against the coronavirus means”で始まる一文は、水色でハイライトした部分がこの文全体の主語と動詞、そのあとにthat節が続き(thatは省略されている)、that節の中に主語と動詞が3回現れていることがわかります。
「スラッシュ・リーディング」の一つの大きな目的は、「リスニングをした時に文頭から情報処理をできるようになること」です。
「直読直解」がリーディングの速度を上げていくことに繋がるように、
「直聴直解」ではリスニングの速度が上がります。
リーディングの速度やリスニングの速度が上がると、テストなどで時間内に回答できるようになることはもちろんですが、スムーズで自然なコミュニケーションに繋がります。
そして、「スラッシュ・リーディング」での文の構造分析を通じて、精度の高い読解が可能になるのです。
「精度の高い読解」は「精度の高いリスニング」の基礎になります。
ぜひ、皆さんも英語学習に取り入れていただければと思います。